グーニー(ズ)ビブラート 揺れる弦の模倣としての「震える音」

ここまで書いてきてふと気付いたのですが「ファミコン音楽のメリスマ」と言いながらも、エコー、トリルなどはメリスマ(装飾音)とは言えず、奏法と言うべきで、このあとに登場するペダル操作などはもはやメリスマでもなんでもなくなってきそうです。
今回のビブラートも本来メリスマとは言えず、では何と言えばいいのかと申しますと、やはり「ビブラート」と呼ぶ以外ないのですが、拡大解釈すればメリスマと呼べないこともなく、メロディ(歌)に味付けをするという意味ではメリスマにもなり得ると自分を納得させたところで、話を進めます。

ビブラートとは音を震わせることで、この魅力は、以前書いた「12の音」以外の音が聴けることに尽きると思います。これは弦楽器最大の魅力といっていいでしょう。
1オクターブを12に分けると、隣り合った音、例えば一番目と二番目の音、つまり半音が音程の最小単位となります。しかしビブラートではもっと狭い範囲で音を揺らします。ピアノでいえば黒と白の鍵盤の間の音、ギターでいえばフレットとフレットの間の音が含まれます。

ピアノは一度発した音の音程を変えることはできません。ファミコンも私がプレイした限りではBGM内で(効果音は除く)音程を変化させる技術を使用していません。
これは私自身思い入れの深いファミコン初期の話しであって、すべてのファミコンをプレイした訳ではないので断言はできないのですが、この決まりは破られたのは、私の経験では1986年に登場するディスクシステム、その第一弾ソフト『ゼルダの伝説』のタイトル画面を見た時でした。
この名作が名作たる所以なのはゲームシステム、ストーリー、操作性が優れているのは言うまでもないでしょうが、「音の新しさ」がこの世界にリアリティを与えていることも見逃せません。
具体的には、前述のタイトル画面でファミっ子に少なからず衝撃を与えた音楽。これまでのファミっ子はこんなビブラートがかかった高く澄み渡る音を聴いたことがなかったはずです。ライフ満タンで剣先から発射されるビーム音、ダンジョン内のボスキャラが発するうめき声…どれも今まで聴いたことがない斬新な音ばかりです。
メインテーマは3音。アイテムを取って効果音が鳴るとやはり途切れがちです。ダンジョン内の音楽は一見ベースとメロディの2音のみのように聞こえますが、メロディは独特な音をしていてどうもこれは音色の良さという訳ではなく、演奏自体に工夫を凝らして独自の音の出し方をしているようであり名演奏と言えるでしょう。
そう考えるとタイトル曲もディスクシステムの登場によってビブラートが可能になったのではなく、演奏自体に工夫を凝らし、あたかもビブラートがかかったような奏法をしている疑いが強まってきます。

ディスクシステムの仕組みについてはとりあえず置いておいて、この「あたかもビブラートしている音」を使った曲として「グーニーズ」があります。はて、ゼルダとグーニーズはどっちが先だったっけ?と調べてみますと何と同じ発売日でした。
ここでは手前勝手な都合により、グーニーズの方のビブラートを取り上げます。他のタイトルにもビブラート奏法があるかもしれないので、これはこれで調査を続けます。

具体的には滝が流れる5面から、この曲です。

●sample21.mp3


グーニーズより「5面」<0:28>


この曲にビブラートがなかったら、どんなに寂しい音になるか想像してみて下さい。
ギターなら弦を押さえ弾いて音を出し押さえている指で弦を押し上げ元に戻すということを素早く繰り返せばビブラートのできあがりで実にわかりやすく人間的です。ここで重要なのは弦をはじくのははじめの一回だけ、ということです。はじいた弦の振動を止めることなく(音が消えることなく)音程を変化させます。
ピアノもファミコンも音程の最小単位は半音なので、ここは妥協してその範囲で音を揺らすことになるのですが、問題なのはピアノは鍵盤を動かすたびににハンマーが弦を叩いてしまうことです。ギターで言えば必ずピックで弦をはじかなければ音はでない仕組みになっています。
半音を連打する、ということはお分かりのように、これはトリルになってしまいます。トリルならファミコンの得意技でピアノでも再現可能です。しかし上記のグーニーズの曲はビブラートに聞こえます。半音を連打しているのは間違いないのですが、何故トリルではなくビブラートに聞こえるのかとグーニーズに答えを探しますと、それは音の強さの違いということが分かりました。
二音を往復で連打するとき片方の音はごく弱い音、つまり出だしの音を強く出さないということです。

しかしトリルの片方の音だけを弱く、しかも正確に速く指を動かす、という人間離れした弾き方はちょっとできません。
何とか可能なやり方はないのかと考えて、以下のような弾き方を思いつきました。

1,隣り合った半音の低い音を打鍵する。
2,低い音を持続させたまま半音上の音を連打する。


もう少し詳しく説明すると、例えば「シ」を人差し指で押さえたまま、例えば例えば中指で隣の「ド」の音を連打します。「シ」は鳴らし続けます(鍵盤押さえっぱなし)。「ド」の連打はやはり素早く行いたいのですが、音はごく弱く出さなければならずなかなか難しいです。
結果的にこういう音になりました。

●sample22.mp3


グーニーズビブラートsample<0:44>


「ビブラートに聞こえないこともない」といったレベルでしょうか。
効果としては、あくまでも「鍵盤楽器(弦打楽器)を使ったビブラートの真似」であり、本物には及びませんが、「シ」が鳴り続けている分トリルよりはビブラートに近いのではないかと思います。
もっとうまく弾けばよりビブラートに近い音が出せると思うので、上記の方法を土台に今後、弾き方(ペダル操作含む)、指の使い方など試行錯誤していく必要があるでしょう。
加えて、より効果的なビブラートの出し方、ビブラートを使用したファミコンタイトルなども随時募集しているので何か見つけたら教えて下さい。


※名作グーニーズもやはり名曲ぞろいです。MIDIを見つけました。


グーニーズMIDI(作者不明)

これはステージ1と2のメドレーになっていますが、テンポが違うにもかかわらず見事にマッチして聞こえるのは、ゲーム自体をやりこんだ経験によるものでしょうか。ご意見・ご感想お待ちしています。






●ファミコンミュージック理論●
「グーニーズビブラート」
・ある高さの一音を出す。
・その音が途切れない状態で半音上の音を連打する。
・連打の音はごく弱く、かつ素早く行う。



トップファミコン音楽の理論と実践>第十二回